第2話 時の星アンバース

パートC

 

1万年の眠りから目覚めた

惑星アンバースの生き残り、ソラ

 

歴史上の話でしかなかった『終焉』を

直に経験した彼女はひとしきり泣いた後、

少しずつ落ち着きを取り戻していった

ソラ

「うぐっ…あぅ…」

 

ナスカ

「1万年前の終焉…それをたった1人で経験して…」

「怖かったよね、ソラ」

 

ソラ

「ありがとう、ナスカ…」

「はぁ…たぶん、落ち着いてきた、うん…」

 

ナスカ

「レオンド、歪みの汚染状況はどんなもん?」

レオンドは小柄の獣人男性

 

レオンド

「ここ一帯の汚染はないみてぇだな」

「宇宙服なしでも大丈夫」

 

もう1人の隊員は豊満な長首族の女性ピリーカだ

 

ピリーカ

「それと、これ~

 ソラさんの本ですよね~??」

「記憶媒介装置ぃ~」

 

ソラ

「そう…大切な本

 迷惑かけたわね、えーと…」

 

ソラ

「改めて私はソラ・アマハ」

「時の星アンバースのアーキビストよ」

 

「貴方たち目線では1万年前の

 古代人ってとこかしら」

 

「よろしく3人とも」

 

ソラは優しく微笑んだ

あたしたちもつられて破顔する

ナスカ

「苦肉の策だったとはいえアンバースの大統領は

 ソラに大きなものを背負わせたんだねぇ」

 

ソラ

「確かにね…けどナスカも言ってくれたじゃない」

「私は1人じゃないって」

 

「単純な話だったの、ただ助けて…って

 未来人を頼れば良かっただけですもの」

 

ソラ

「うむうむ!へへへ~」

 

レオンド

「なんでも1人で抱えすぎだ、まったく」

 

ピリーカ

「ソラさん、安心して頼ってくださいね~」

 

ソラ

「ふふっ、そうだったわね」

ソラ

「…それじゃ早速みんなでアンバースを救いましょう!

 私も全身全霊を以て力になるわ、まずは何をすれば良い?」

 

3人「………」

 

ソラ

「…?」

「…この星は終焉の最中で時が止まっているわ

 だから時を動かす前に終焉の力を消す必要があるの」

 

「1万年後の貴方たちが助けに来たってことは

 すでに他のスターメモリーを制御下に置き

 終焉をどうにかできる…ってことなのでは……?」

3人

「…………………………………………」

 

ソラ

「……え」

ナスカ

「あのまだ2つしか…

 発見されてないデス…スターメモリー……」

 

「水の星の『生命』と光の星の『熱光』の

 スターメモリーしかない…ッス~」

 

ソラ

「………へ?」

 

ソラは白目をむいて倒れかけた

 

ソラ

「全然、文明が進んでいない…!?」

 

ピリーカ

「む、むしろ終焉前より後退

 しちゃってますよぅ~」

 

レオンド

「ってオイ、大丈夫かお前…!

 顔面真っ青だぞ」

 

ソラ

「は、吐きそう…!」

「ウッ!……はぁはぁ……」

ソラ

「な…なんで探査は!?

 まず一番に探すでしょスターメモリーを!」

 

ナスカ

「銀河連邦も星律教会も発足7~8千年間で

 開拓を全力で進めているけどォ…」

 

「スターメモリーのある場所すらわかってないよ」

 

ソラ

「場所すらぁ!?」

 

「み、未来の人たちは

 この一万年間なにしてたのよ!?」

「ずっとお茶くみでもしてたの!?」

ナスカ

「い、いやぁだってェ……」

「終焉は記憶・記録・概念の

 喪失を引き起こしたからぁ…」

 

レオンド

「そうそう…!

 スターメモリーがどの星にあったのか…

 その記録も伝承も手掛かりすら無いんだぜぇ」

 

ソラ

「はぁ…」

ソラ

「………」

「…なら場所が分かればいいのよね」

 

レオンド

「えぇ、わかんのかよ!?」

 

ソラ

「終焉の際に起きた理の崩壊のデータを

 逆算すれば何処に何のスターメモリーが

 あったかわかるはずよ…」

 

レオンド

「…いやだから、そういう情報も崩壊して―—」

ソラ

「一か所だけ」

 

「終焉の情報崩壊の影響を

 確実に受けなかった場所がある」

 

ナスカ

「ソラの記録が残っていたように

 時間が止められていた場所…」

 

「つまり『時のスターメモリー』の中…!」

 

 

時計楼閣 中央階段

ソラ

「終焉の時、私は惑星系の

 全観測データを大統領に送ったの」

 

ナスカ

「近くの惑星のデータ? ふむぅ…なるほど」

「それなら各データの影響時差から

 理崩壊の中心地座標が出せるね」

 

「つまりそこにスターメモリーだッ!」

 

ピリーカ

「わぁ、ナスカさん!

 頭が良すぎます~♡」

レオンド

「…でも”当時”の宇宙地図上の

 座標がわかっても仕方なくないか?」

 

「終焉で宇宙空間そのものが歪んだんだからよ

 今と違うと思うぞ、その座標」

 

ソラ

「なら『空間』の崩壊パターンも

 解析して計算に組み込めばいい」

 

「解析に必要なデータも全て

 『時のスターメモリー』の中にあるはずよ」

 

「まずはその取得が最優先」

レオンド

「解析自体はここじゃできんか~」

 

ピリーカ

「拠点に帰れば星律教会がすぐ解析に

 動いてくれそうですけどォ~」

 

「そこからは所属アーキビストたちの

 頑張りどころですね~」

 

ソラ

「アーキビスト」

 

ソラは立ち止まって、青い本に目を落とした

ソラ

「アーキビストは、

 1万年後の今でもちゃんと機能しているのね」

 

レオンド

「そうだぜ、元祖アーキビスト様

 何を隠そう俺とピリーカもアーキビスト」

 

ソラ

「そうなの?」

 

「でも情報の管理が本業でしょう?」

「……なんでわざわざ現地調査に?」

ピリーカ

「そりゃあ人手不足ですからぁ~」

 

ソラ

「ぬぅ」

 

レオンド

「でも給料はいいんだぜッ」

「なんたって休み、ないから!」

 

ナスカ

「ブラック業界は理の崩壊を

 免れたようだねっ☆」

 

3人はドッと爆笑した

ソラ

「よ、世も末だわ…」

「彼女らに…大きな期待できないわね…」

 

ソラは頭を抱えながら

重い足取りで階段を昇っていった

 

「―――ったく…」

「こっちは母星の運命を背負ってるのよ…ッ!」

 

ソラ

「さ、着いたわ」

 

時計楼閣の頂上には、時のスターメモリーが

鎮座する時計聖堂がある

 

予想していたことではあったけど

その真ん中にはソラのお父様や側近”だった”ものがいた

 

ナスカ

「…アクタルテン、やっぱりいるよねぇ」

「ってソラが知ってる訳ないかぁ」

 

ソラ

「アクタルテン…

 いや当時の光の星で、その名を見たことがあるわ」

 

「ゴミを意味する『芥』に移り変わりを意味する『流転』」

「『芥流転』…そう誰かのメモ書きにあったわ」

 

「世界の歪みが生まれた常軌を逸した怪物らしいけれど」

「でもやるしかないわ」

ソラ

「いい?作戦は単純」

「アクタルテンのコアの『時のスターメモリー』…

 そこから終焉のデータを抜き出すの」

 

「コアにこの解析杭を打ち込めば

 あとは私が遠隔でデータを抽出するわ」

 

解析杭は20cm程の杭でソラの持つ

本との間で情報を送受信できるらしい

 

ナスカ

「ふふん、わかりやすくていいねぇ」

ソラ

「このデータは終焉後の人類にとって

 最も重要なデータと言ってもいいわ」

「死ぬ気で挑むの、冒険者なんでしょ」

 

ナスカ

「うむ、アクタルテンの相手は得意だよ~」

 

ソラ

「…緊張感の無い人」

 

ソラは怪物の方に目をやり

持ってる本をこれでもかという程握りしめた

 

「多くの人の運命がかかっているんだから、頼むわよ」

ソラ

「ところで他の二人は?」

 

ナスカ

「ピリーカとレオンドはアーキビスト…

 調査特化で戦闘は専門外だからねっ」

「万が一に備えて退路確保、それと本部との連絡役にしたよ」

 

「それに2人は星律教会所属…

 この”力”を見せるにはちょ~っと不都合ね」

 

そういって、あたしは右手の螺旋の傷から

力の源である青く不明瞭な歯車を取り出した

 

 

そして歯車を握り、手を振ると

歯車はたちまち鋭い槍斧に変わる

 

ソラ

「な、なにそれ…ッ?」

 

ナスカ

「終焉の影響下で生まれ落ちた歪んだ人種…

 『バグ』だけが使えるバグ技だよ」

「力の名を『バース』」

 

ソラ

「バース…?」

ソラはその右手を前に突き出す

そしてバースの情報を”汲み取った”

 

ソラ

「それは…」

 

「それは、終焉の力でしょ!」

 

彼女はバースの正体を一瞬で見破った

 

ナスカ

「終焉がもつ万物法則を歪める力」

 

「師匠から授かったあたしたち

 バグの運命を動かす秘術だよ」

 

ソラ

「恐ろしい力…!」

「そんな恐ろしい力…許せるわけ……ない」

 

ソラは膝から崩れ落ち、動揺した

 

ナスカ

「………」

「たしかに、かわいい力じゃないかもね…」

ナスカ

「でも実績は十分なんだよッ」

「あたしの冒険者としてのデータ

 勝手に見てもう知ってるでしょ」

 

ソラ

「……そう…みたいね」

「はぁ、その力に頼るしかないみたい…」

 

「…一応、お礼に解析データは

 優先して回すよう星律教会とやらに掛け合ってあげる」

 

「――頼んだわよ、あなたに」

 

ソラはあたしを見ずにそういった

 

ナスカ

「ありがとうッ! …じゃあ、いってくる」

「だけど――」

 

「あたしの身になにかあったら

 メーチュって子を頼って」

 

ソラ

「え」

 

その時、視界いっぱいに黄金色の閃光が走った

 

それは時をも超える光速の拳

対峙するは時を司る最強のアクタルテン

 

あたしはハルバードを握りしめ、構えた

 

第2話  時の星アンバース

Cパート