宇宙が生まれた。
そして間もなく大爆発で膨らんだ。
そこで生れたものがもうひとつ…
それが「歪み」だった。
歪みとは「理(ことわり)」の歪み。
時空や法則…―――心すらも歪ませる強い力。
「人」はそれを御し、形を与え神器とした。
その名を「スターメモリー」という。
宇宙の星々が知らない、新たな運命。
理を超越するスターメモリーは
人類に大いなる繁栄を与え、そして……
―——戦争と…「終焉」をもたらしたのであった。
だけどそれは遥か1万年前の話!
人類は終焉を生き延び、
かつての栄光を取り戻すために銀河へと飛び立つ。
その者たちこそ「冒険者」…!
歪みにより生まれる怪異や怪物に立ち向かい
スターメモリーの神秘を追い求める希望の英雄たち!
「まさに銀河の大開拓時代!」
「次に奇跡を発見するのはキミかも知れない…」
「冒険者協会では新たな冒険者を歓迎いたします」
「はぅわあ~ッ!」
「あたしも冒険者になって…」
「すっっっごい冒険をいっぱいするんだぁ!」
賑わう人ごみの中で繰り返し流れるホログラム映像に
熱い感嘆を漏らす少女がそこにいた。
砂漠の惑星 ヒガン
ヒガン大砂漠
宇宙港と首都をつなぐ数少ない便数のビークルには
これまた数少ない客が乗っていた
ヒガンの民はみんな獣人らしい
獣耳や尻尾が生えていて、車内はモフモフとした空気に包まれていた
その『花』に触れると
花は花弁をクシュっと縮こませ、
あたしを避けるように身を引かせた
ピンク髪の少女
「うわーなんか…
嫌われたみたいでショックだなぁ…」
藍色の獣人娘
「でも花占いだと、けっこうレアだよ!」
「反応の意味は……なんと、変革する者!」
ピンク髪の少女
「わ~ぉ、変革!」
「あたしにピッタリ~♪」
運転手のおじさん
「ぴったりぃ?アンタみたいな若造にかぁ?」
ビークルを自動運転に切り替えてきたらしい
運転手のおじさんが訝し気に訊いてきた
ピンク髪の少女
「あはっ!そうだよ」
「だって『冒険者』の発見はいつだって
変革をもたらすんだから」
ピンク髪の少女
「あたしの名前聞いたことないかな『ナスカ・テンタクルス』」
「螺旋の冒険者の名でそこそこ通ってるんだケド」
そういってあたしは砂漠マントを脱ぎ、
手首や首にある『螺旋の傷』を見せると
同乗してた女の子が「あっ!」と大きな声をあげた
黄髪の獣人娘
「え、知ってる!ナスカ・テンタクルス!」
「銀河通信の隅っこの方の写真で…出てたよね!」
ナスカ
「お♪ そうそう、それそれッ!」
「未開の星から『踊る人面サボテン』の発見した時のコラムね」
乗客の女の子たち
「あぁ~!あのちょいブサ顔の人面ね!」
「ヒガンでもあれ踊る動画流行ったよね~」
ナスカ
「わぉ、さすが砂漠の星っ」
「一年前の特集だったけど覚えてんだ~」
「ど~う?一緒に踊らない?」
あたしは自然な動きで女の子を引き寄せた
女の子たち
「キャ~♪ ちょっとイケてるかも~ッ♡」
「ナスカさ~ん、くずぐった~い♡」
ナスカ
「ほら、イチャイチャ、イチャイチャっ♪」
運転手のおじさん
「……………」
運転手のおじさん
「てめぇ人の車で何やってんだッ!」
ナスカ
「ぎゃぁああああああ!!!」
「なんかこう…イケると思って!イケると思って!!」
運転手のおじさん
「ほら大人しく座っとけェ!」
「セクハラで銀河警察に突き出すからなっ!」
ナスカ
「ハーイ」
ナスカ
「それでぇ…この花について聞きたいんだけど」
「この惑星ヒガンで
他に不思議な現象を引き起こす『花』って知らない?」
あたしの質問に皆は首をかしげる
一同
「花ぁ?不思議な現象?」
「う~ん、そもそもここ砂漠の惑星だから
占い花以外の花もあまり見れないしねぇ…」
ナスカ
「占い花ってぇ、この花か…」
「まぁそっか、なかなか植物的に厳しい星なんだね」
運転手のおじさん
「んー、でもあれはあるだろ、王家の…ほら」
一同は「あぁ~確かに!」と手を打った
黄髪の獣人娘
「なんでも王族のヒバヌヴァルカ家ではごく稀に
特殊な能力を持つ者が産まれてくるらしくってね」
「『花の歌に踊る』」
「……それがそういう力らしい」
藍色の獣人娘
「まぁあくまで伝説として
残ってるだけなんだけど、うふふ」
運転手のおじさん
「超常現象としては……チョット地味かぁ?」
「冒険者がワクワクするようなぁネタじゃねぇな」
ナスカ
「ふむぅ、確かに…地味っスねぇ…!」
ナスカ
「でも、ビンゴ…かも知れない」
あたしは、体の中で冒険者の血がムクリと沸いたのを感じた
探していたものがこの惑星にある気がする
「あはんっ♪ そうと決まれば?
まずは惑星ヒガンのアーカイブ・アクセス申請を~…」
だけど、その時―――
ドックン…!
体の螺旋の傷がピクリと反応した
これは……
ナスカ
「理(ことわり)の歪み…!」
あたしは身を翻しビークルの上に飛び乗った
見える範囲に異常はない
運転手のおじさん
「お、おいっ!?急にどうしたぁ!」
ナスカ
「見えないけど、近くにかなり興奮状態の大型生物がいる…!」
「みんなシートベルトを着けて!」
女の子たち
「大型って…!そんなどこにも!」
あたしは手首にある傷をさする
傷から直接感じる『歪み』の強さで大体わかる
ナスカ
「距離は160m…9時の方向!これは………」
「砂蟲だ!」
ドゴオオォォォォン!
指した位置に轟音と共に大きな砂煙が巻き起こった
そして全長70mほどもある
巨大な砂蟲が勢いよく飛び出してきたのだ!
女の子たち
「きゃあああっ!」
運転手のおじさん
「おいおいおい!なんだアリャァ!」
「あんな大きさ見たことねぇぞぉ!」
車内は一瞬にしてパニック状態になった
無理もない…中型宇宙船ほどもある砂蟲がその無数の脚を使って
ビークルに負けず劣らずの速度で泳いでいるんだから
ナスカ
「みんな落ち着いて!あいつはまだこっちに気づいてない!」
「おじさんは手動運転に切り替え、安全なルートで街へ」
運転手のおじさん
「お、おうおうおう!そ、そうだな!」
「砂蟲避けは搭載してたんだったッ!おおお落ち着けオレ!」
女の子たち
「び、ビックリしたけど、なんとかなった…ぽい?」
「よかった~」
「でも…王都周辺であんな大きな砂蟲がいるなんて…」
「なんだかチョット…変だよね…?」
ナスカ
「………」
「『変』……?」
背筋に悪寒が走った
砂中で生きる砂蟲が意味もなく砂上を泳ぐはずがない
それもあんなに興奮状態で…
つまり―——
ナスカ
「何かを追っているんだ」
「しかもこの感じ…獣じゃない」
「人間だ…!!」
あたしは即座にビークルを飛び出した!
女の子たち
「ちょっとナスカさん!?」
ナスカ
「人が襲われてるっぽい!
助けに行ってくる!」
あたしは砂の上を駆け出した
運転手のおじさん
「人ォ!? いやいや!相手は大砂蟲だぞ!
それに砂の上じゃ足を取られる…絶対ムリだ!」
ナスカ
「ムリぃ?」
あたしは太ももにある螺旋の傷に触れ、砂地を蹴り上げた
ナスカ
「あたし以外ならね!」
蹴り上げた勢いは砂に相殺される事もなく、体はビュンと前進した
そして次の一歩、そしてまた次の一歩…と
軽やかな足取りでドンドン加速していく
女の子たち
「えぇぇぇ!?」
「どうなってるのぉ!?」
驚く一同を尻目にあたしは砂丘を滑るような軽さで駆け上がる
砂丘を飛び越えると砂蟲の全貌と、追われている人を目視できた
そこそこ立派なビークルで逃げているのは…1人
ナスカ
「女の子!」
この星の住民らしい、ケモミミが生えている
砂蟲とビークルとは40mほど離れてはいるものの
少しずつその距離を詰められているのが確認できた
あたしは女の子の方に走り寄り手を振った
ナスカ
「おぉ~い、大丈夫~!?」
「助けに来たよっ!」
ビークルと並走するように近づき声をかけると
女の子は仰天した顔で目を見開き、口をあんぐり開けた
逃げる獣人娘
「え…ちょ、えっ!?生身の…えぇぇっ!?」
ナスカ
「一旦運転席乗るね、よいしょっと」
逃げる獣人娘
「いや、ちょ…!どうやって走って……」
「ってかどこ触って…!?ねぇ!!」
遠慮もなく無理やり運転席に体をねじり込む
緊急事態。多少のお触りは許されるはずだ
逃げる獣人娘
「マジありえないんですけどぉ!」
「あんた状況わかってる!?
砂蟲がもうそこまで来てるってば!!」
ナスカ
「落ち着いて落ち着いて~」
「えぇ~と、進行ルートは…っと」
逃げる獣人娘
「いやいやいや!待って待って!」
「車体超重くなってるから!?」
「ねぇ!もう死ぬくない、これ!?」
気付けば砂蟲との距離は15m、熱気が肌で感じられる程の臨場感!
そして最後の大詰めをせんと、砂蟲は体をくねらせ大きく跳躍した
距離は残り5m、砂蟲は口をガバッと開き狙いを完全にとらえた
逃げる獣人娘
「いやあああああぁ―――!」
だけど…大丈夫……
ナスカ
「だってあたしは―———」
ナスカ
「すんごい冒険者になるんだから―――ッ!」
ドオオオオオオオンン!!!