背から生える羽で飛来してきたのは
まさにバケモノといった生物だった…!
四肢と翼は生々しい管を縒り合せた形で、
大きな口は糸か何かで縫合されている
自然界には見られない生物的特徴…
おそらく『人の手』が入った生物だろう
店員と客
「バ、バケモノ――ッ!?」
突然の出来事に店内はパニックになった
普通の酒場だから、冒険者は他に居ない…
ソラ
「ディバグが…いの一番に逃げるんじゃあないわよ!」
「私が…やるしかない…!!」
私は運命の歯車を本の形に変え、
細剣を取り出した
刀身には解析杭同様、
自分の解析神経細胞が組み込まれている
左手に本、右手には細剣
これは攻撃と解析を両立させる合理的な構え
市民を守るために私は決心をする…!
バケモノ
バケモノは対峙する私を敵と見なす
縫合をぶち破り、その五方向の口を大きく開き
四足走行で襲い掛かってきた
だけどやることは変わらない…
私は右手を前に突き出し
バケモノの身体構造の情報を取得する
ソラ
「後脚筋量は前脚の9.6倍
「胴体側面からの肩の骨格に加えて、
掴むのに適した前脚構造」
「口内、牙は無し…飲み込むことに特化」
――突進をしながら前脚と口で
拘束をする攻撃だと推測される
攻撃範囲計算、誤差2%」
私が本をたたむと、解析完了を示す
ホログラム折り紙の蝶が舞った
問題はない、私は斜め右に勢いよく飛びあがる
するとバケモノは予言通り、
両の前脚と口で地面すれすれを薙ぎ払うように掴みかかる
当然、そこには誰も居ない!
虚空を抱き、スキだらけになったバケモノの
首元めがけ私はしなやかに細剣を突き刺した
――細剣の解析神経から
バケモノの血流の情報が流れ込んでくる!
ソラ
「心臓器官の位置を把握、右肩甲骨32cm下」
私は体をねじって剣を引き抜き、
そのまま怪物の右肩甲骨に向けて手首を捻る
細剣は弧状に大きくしなった
そして剣先で肩甲骨の隙間を捉えると
私は思いっ切り腕を突き出し、弱点を押し貫いた
バケモノ
静かな刺突だったが、致命的だったらしい
怪物はしぼるように断末魔を上げ、崩れ落ちた
私はよろめく様に着地をし、
怪物の死を見届けながら壁にもたれ掛かる
ソラ
「ハァハァ……ややや、やれたぁ…!
デトール兄弟がくれたこのレイピア…
業物ね…体に馴染むわ…」
だが、安堵したのも束の間…!
バケモノたち
お店の窓から別の怪物たちが侵入してくる!
客
「うわぁ!ホントなんなんだ、こいつらはぁ!?」
「た、助けて冒険者さん!」
ソラ
「か、囲まれている!」
「敵数6…!みんな私の後ろへ!」
怪物たちは興奮をしており、
すぐに一斉に襲い掛かってくる!
―――その時!
突如として店の入り口側から
鋭い氷のつぶてが飛んでくる!
つぶてはバケモノたちに命中
ぶつかった部位をパキパキと
ゆっくり凍り付かせていく
バケモノ
「ショ…ア……? ア……!」
抵抗をするバケモノたちだったが
動きは徐々に止まっていき
ついには完全に凍ってしまう
入口の方を見ると、
そこには予想外の顔見知りがいた
メーチュ
ソラ
「メーチュ!? い、今の氷は一体…!?」
「じゃなくて…えっと…
に、逃げなかった、あなたたち!?」
メーチュ
「みんなで店を退避するよう呼び掛けたのに、
ソラちゃんずっと恍惚そうに
能書きを垂れてたから…ッ!」
ソラ
「……」
「解析ニ夢中ニナッテマシタ…
スミマセンデシタ……」
メーチュ
「今街で大変なことが起こってるんだヨ…ッ!
ここは街の警備の人にまかせて、みんなの所へ急ごッ!」
メーチュは優しく手を出してくれる
私はやらかしの冷や汗をぬぐい、
店の外へ飛び出した
ソラがよだれを垂らして
解析に耽り始めた丁度その時…
『街に化け物が現れた』…と
セリザアから連絡入った
店を飛び出した
あたしたちが見たのは酷い光景だった
バケモノ
逃げる少年
「うわぁああ! なんだこいつらは!?」
狼狽える少女
「わたしのお人形、返してよ~っ!!」
街は全身赤色のグロテスクな
バケモノたちに襲われていた
バケモノは空を飛び、
ベロのような器官で
オモチャを奪い取っているらしい
ベルベリー
「化け物たちがオモチャを奪ってる…!!」
「だれか…助けなきゃ…!」
ナスカ
「狼狽えちゃダメ、冷静に」
「冒険者と街の警備隊も全面出動してるらしいし
セリザア! まずは状況説明を」
セリザア
「はい! 警備庁よるとバケモノは広場・大通り・駅など
人の多い所に現れているみたいッス!」
「怪物の狙いは子供たちのオモチャたち」
デル・デトール
「それゼッタイ、オモチャに使われてる
『繭』の糸が狙いだね~!」
セリザア
「そう! それを裏付ける様に
マイステッチ社や他工場でも事件っすよ!
なんと『繭』そのものまで強奪されている始末ッスよ!」
「バケモノの集団の映像がばっちり残ってるス!」
ナスカ
「うむぅ、犯人も大胆に出てくれたわね~
これはさすがに予想外」
ラオニティス先輩
「はっ、オレたちの捜査介入に焦ったか」
「尻尾を掴むんなら今じゃね?」
その時、脂汗まみれのソラがメーチュと共に走ってくる
ソラ
「ス、スミマセンデシタ……!」
ラオニティス先輩
「たぁく、なにやってんだよめんどくせー」
ナスカ
「まぁまぁ、無事で何よりっ」
ナスカ
「状況はみんな聞いていたね
街はピンチ、混乱のさなか」
「と同時に事件の黒幕は焦って『繭』をかき集め、
何かを成し遂げようとしている」
「そこでベース隊とナスカ隊で二手に分かれますッ!」
「あたしたちナスカ隊は、
バケモノたちの元締めであろう真犯人を叩き潰す!」
「ベース隊はエリオット団、警備隊らと
協力して街の守護を担当する」
「そして――」
ナスカ
「ベルベリー・ボビンシャトル」
「今こそ『ぬいぐるみ警備隊』の出番だよ
ベース隊と協力して街を守るんだ」
ベルベリー
「……あんなバケモノとベルが…?」
ナスカ
「あはっ♪」
「ベルちゃんは運命の歯車を
完璧に扱えてるんだよ、ムリじゃないさ!」
「気に食わない結末は、
この手で捻じ曲げるんだよ!」
ベルベリー
「運命の……歯車…」
ベルちゃんは手首から歯車を取り出し
その乱れのない様を眺めた
メーチュ
「セリザアちゃんの指示通りに
動いたら絶対大丈夫だからッ!
自分を信じて…!」
彼女はゆっくりと頷き
あたしたちの目を見据えた
ベルベリー
「…わかった」
「セリザアのいう事、聞く」
セリザア
「良い心がけ~っ♪」
「それじゃベルちゃんとベース隊、諸君!
広間へゴーゴーゴー!!!」
セリザアが移動ルートを設定すると
それに従ってベース隊は駆け足で走り出す
デル・デトール
「わ~!仕事だ~!」
ベルベリー
「冒険者さんたちも無事でね…!」
メーチュ
「うん、犯人は任せて…ッ!」
ナスカ
「それじゃあ、今度は我々の番っ♪」
「黒幕を探しあてるよ、ソラ
今から暗号化通信でとある人物に繋いでほしい」
ソラ
「私の人脈頼り!? 一体誰のこと…?」
ナスカ
「………なんと、」
「ランダカン支部長」
ソラ&メーチュ
「えぇっ!?あのお金にうるさい!?」
ランダカン支部長
惑星テルミナの星律教会
情報管理部の支部長で
当星アーキビストのトップであり、
守銭奴の中の守銭奴、その人である
ソラ
「こっちから連絡いれるのは
気が進まないけれど…
そうも言ってられないわね」
「……ピピピピピッっと!
もしもし、支部長さん?」
ソラが連絡を入れるとすぐに
ランダカン支部長の独特な訛りの怒声が響いた
ランダカン支部長
「人が収益勘定してるのを邪魔するヤツァー」
ソラ
「…私よ、ランダカン支部長さん」
ランダカン支部長
「ってぇ、アンタは…
『名誉支部長』さん…!」
ナスカ & メーチュ
「名誉支部長ッ!?」
ソラ
「コホン! …彼が勝手に言ってるだけ、気にしないで
とにかく今は緊急事態なの、あとは…ナスカ?」
ナスカ
「うむ、ランダカン支部長さぁ
惑星ミューブのトイメッカって街知ってるよね
テルミナでも流行ってるオモチャのアレ」
ランダカン支部長
「んぁ? あぁ、お前ネ、ピンキーなヘアーの」
「――トイメッカはモチロン知ってるだろォ
俺様がテルミナでやってた
ホビー事業を潰してくれたニックキ商売仇よォ」
ナスカ
「い、因縁だったんだ…」
ナスカ
「――んでぇ、そのトイメッカのオモチャ
今まさに陰謀がヤバくてさ~?
どうやら裏に黒幕がいるみたいなんだよ」
「なんでも、物体に『心を宿す不思議な繭』が
狙われているみたい」
ランダカン支部長
「わお! 心を宿す繭ゥ!?」
「なるへそ! 陰謀の傍にはいつだって儲けバナシ!
今、つけ入るスキがあるのね、イイジャン♪」
ナスカ
「あはっ♪ ワクワクするでしょ?
お金になるイイ情報を上げたんだし
意見を聞きたいんだけど」
「黒幕って、どんな業界のヤツだと思う??」
ランダカン支部長
「はぁ~う………」
「そりゃ『心を宿す』ってンならよォ~
知性を持った重労働ロボットや、人語を解す動物研究
あと意識転移とか精神疾患の研究機関っしょ~」
「………ってぇ、そういえば・リメンバー」
「トイメッカがまだ、
トイメッカって名前じゃなかった時代…」
「その『心を宿す繭』で街おこし何をする~?
って決める会議があったらしくてだなァ」
「そこでオモチャ事業案の一個前に
ムナしく潰えた事業案があったのヨ」
ランダカン支部長
「戦争の道具さね、つまりサ」
メーチュ
「生体兵器ッ!?」
「そんな物騒なもので
街おこしの可能性もあったんだ…ッ!
なんというかオモチャとは逆の分野だね…ッ!」
ランダカン支部長
「いくら金になる話だろーが、
アグレッシブ過ぎると角が立つっちゅ~ね」
「そいつの残党が黒幕じゃね?
闇市で繭の動向を探れバ?」
ナスカ
「あっちゃ~…闇市か…!
そっかその線ありましたわなぁ」
ソラ
「今、闇市の調査データにアクセスしたわ」
「……たしかに、動物研究のように功名に偽装された
怪しげな研究機関が『繭』の糸を集めてるわね」
ナスカ
「目的地、決まったね!」
「ランダカン支部長、急なお呼び立てで悪かったよ
けど、有料級な情報だった!」
ランダカン支部長
「 金! 金くれるのカァ~~~!?!? 」
「いくら!?!?!?」
3人
「…………」
あたしたちは通話を切り
その怪しげな研究機関へと足を飛ばした
支部長の方には後で、
ソラからお礼申し上げてもらおう……