第2話 時の星アンバース

パートB

 

虹色の火花は目の前のビルに直撃し、

周囲の空間ごと吹き飛ばした

 

 

気が付くと足元の地面が忽然と消えていた

 

そしてそれを認識した時には既に

全身が壁に打ち付けられていた後だった

 

ソラ「ア………がァ…ッ!」

 

背中を打ち、息がうまく出来ない

どうやら私は強い衝撃に吹き飛ばされたらしい

ソラ

「ハァハァ…ッ

 きょ…局長…っ!」

 

ぼやけた視界で彼がいた方向を見る

 

そこに局長の姿はなく

ぐちゃぐちゃに崩壊した回廊だったものがあった

 

物質や次元、そして法則が崩壊したそれは、

形容しがたい非現実的な様相を漂わせていた

 

それはまさに…

ソラ

「終焉…!」

 

原因は不明だが…星際機関の情報網を超え、

すでにスターメモリー同志が

衝突し暴走をしてしまったらしい

 

理の崩壊は超光速で銀河に波及し

準備をする時間を与えることもなく

この星を襲ったのだ…!

 

私は左目に尋常ならざる違和感を感じた

 

熱い、冷たい、痛い、ネバネバする

あらゆる種類の嫌悪感が濁流となって

眼内を駆け巡っている

 

おそらく終焉を至近距離で

”視た”からであろうか

 

狂乱寸前、ギリギリの頭で

私は必死に思考をした

ソラ

「ハァ…ハァ…、本を出して…!」

 

私は本を取り出し各都市の情報中枢にアクセスした

今、やるべきことをやらねばならない

 

「解析を…開始する!!」

 

右手で本に触れると

大量の情報が頭に流れ込んでくる

 

数値だけでなく音声や映像のデータ

解析のためにあらゆる情報を収集する

 

——そこで見えたのはまさに地獄の景色だった

 

ソラ

「局所的な真空崩壊、次元の亀裂…

 観測と認識の不可能領域…生物の怪物化」

 

今まさに星が壊れている

ソラ

「基本法則の歪み、存在消滅の痕跡

 感情・記憶の混濁……星系全域で観測」

 

生まれ育った

愛しい星が星民たちが死んでゆく

 

理不尽な惨状に心が砕かれそうになる

ソラ

「だけど!このデータだけでも……

 お父……様へ…!」

 

私は文字通り死ぬ気でデータを解析し送信した

 

その結果、7つあるスターメモリーのうち

『時のスターメモリー』を除く

6つが暴走をしていたのは明らかだった

 

——終焉はその言葉に、

似つかわしくないほど

 

仰々しさもなく

あっけなく世界を終わらせた

 

 

お父様

「アンバースは終わる」

「この運命は変わらない」

 

「今現代ならば…な」

 

お父様は崩壊した聖堂を覗く、黄金色の空を見ていた

不安などおくびに出さず力強く説いた

 

終焉到来から30分、要人たちは緊急招集されていた

お父様

「私たちはこのアンバースの時を止める」

 

「そして未来、この終焉を

 生き残った世界に、人々に希望を託す」

お父様

「1万年計画」

 

「君たち選ばれし5人の賢人は、1万年後に目覚めるだろう」

 

「そして…どうかこの星を救ってくれ」

 

お父様は淡々と言い切った

 

ソラ

「お父様…」

 

「時のスターメモリーに願うには

 代償が必要です、大きな代償が」

 

お父様

「いっただろう、この星はもう終わるのだ」

「代償もなにもない」

 

お父様は背を向けて歩き出した

 

ソラ

「お父様!どうして…」

「どうして私なんかが…!」

私は取り乱し、役員たちに抑えられた

 

「…お嬢様こちらへ」

「この星の事…お願いいたします」

 

そこで薬を打たれたらしい

私の意識はそこで途切れた

 

”外”では時間が過ぎ去った

 

未来の人にとって終焉は遠い昔の悲劇だろう

それがなんとも羨ましい

 

私にとってはつい先ほどの出来事なのだから…

たくさんの人が死に

 

そして私たち賢人を未来に送る

代償でも多くが死んだ

 

私がしくじったら今度はこの星が死ぬ

その責任の重さに押し潰されそうになる

頭には不安と孤独が延々と巡り

私は機械の中でブルブルと震えていた

 

———その時

 

プシュウウウウ!

カプセルが開き

眩い夕日が差し込んできた

 

宇宙服を着た3人組、1万年後の人類

表情は見えずロボットのようにも思えた

 

 

 

私は彼らの姿に安心感を覚えるわけでもなく

ただ嫌悪感を感じていた

 

手を差し出すその人が同郷の同志じゃないことが

只々悲しくて悔しくて…

もう何もかも終わってしまったのだと―――

その孤独に絶望した

 

 

「もう1人じゃないよ」

女の未来人はヘルメットを脱ぐ

 

「あたしの名前はナスカ・テンタクルス!」

「この星の希望はあたしたちが受け取った!」

 

そのナスカと名乗る少女は力強く笑った

なんの根拠もないくせに

この星のことなんにも知らないくせに

 

少女は無責任に笑ってそう言った

———だけど

 

ソラ

「ああぁああん……ッ!」

「助けで……ナスカァ…ッ!」

 

——だけど……

温かい彼女の言葉が、只々嬉しかった

 

第2話  時の星アンバース

Bパート