第2話 時の星アンバース

パートA

 

小さな探査隊員

「見ろよこれ、大聖堂かなにかか?」

 

ふくよかな探査隊員

「わぁ広いですね~!」

「時計楼閣の技術力を

 誇示しているものでしょうかね~?」

 

広くもの寂しい大聖堂は悠久の夕日に照っていた

角と翼の探査隊員

「ここに『時のスターメモリー』があるんだねッ!」

「くぅ~…!ワクワクしてきたよ」

 

小さな探査隊員

「なんつったってェ、7つあるスターメモリーの内の1つ」

「発見できりゃ大金持ちだぜ」

 

初対面の3人だったが惑星”アンバース”の

探査は滞りなく進んでいるらしい

楽しげな談笑が大聖堂に響いていた

 

惑星「アンバース」

 

時を司る『時のスターメモリー』の力によって

1万年もの間、時間が止まったままの星

 

 

1万年前、この星が” 終焉 ”に見舞われた際に

その時の力によって

破滅の運命ごと星の時間を止めたのである

だがその力も徐々に綻びを見せていき

 

ここ数年では一部地域の時間の流れが元に

戻っていることが観測されたのだ

 

 

そして今、現在

終焉の謎を解かんと探査隊が

送られる運びとなったのである

 

角と翼の探査隊員

「これは…時間の自販機!?」

 

「どうやら人の時間を買ったり

 売ったりしてたみたいだねッ」

 

ふくよかな探査隊員

「えぇえっ!すごい文化だったんですね~」

 

角と翼の探査隊員

「これを使えば忙しいあの子とも

 デートができるんだよっ♪」

 

ふくよかな探査隊員

「キャッ♡」

「推しの冒険家にハグされました~♡」

 

小さな探査隊員

「あんたら、なに宇宙服どうしで

 イチャイチャしてんだよ…」

 

角と翼の探査隊員

「大事なのはこ・こ・ろ!

 心のハグよ~♪」

 

「…って、ん?」

 

探査も順調で陽気に

じゃれつき合ってた隊であったが

角の女は何かに気づき立ち止まった

角と翼の探査隊員

「理の歪み…」

「これは黄金色の…『時』の歪み…?」

 

角の彼女にはなにかが見えているらしい

手首をさすりながら、回廊の奥を見つめている

 

他の2人はなんのことかサッパリであったが

彼女の勘を信じてついていくと

回廊の突きあたりの小さな保管室に辿り着いた

 

扉を慎重に開けると薄暗い部屋に夕日が差し込んだ

中はこぢんまりとしており

真ん中に3m程のカプセルが置かれているだけだった

 

ふくよかな探査隊員

「ほこりが舞ってる…ということは

 この部屋は時間が動いてるってことですよね~」

 

小さな探査隊員

「でも全27回の調査で報告されてないエリアだぞ」

「最近入れるようになったのか?

 

角と翼の探査隊員

「……!」

「ちょっと、ねぇ…やっぱり感じる」

角と翼の探査隊員

「人の気配!このカプセルから!」

「これぇ、タイムカプセルなんだよ!」

 

2人は驚きの大声を上げた

 

小さな探査隊員

「えぇつまり終焉以前の人間ってことか!?」

「マジかよ!大発見じゃねえか!」

 

ふくよかな探査隊員

「わわわっ!」

「胸がドキドキしちゃいます~♡」

角と翼の探査隊員

「見て、ここに映像記録があるよ」

「終焉の時のこの人の記録…」

 

「終焉は物理的な破壊だけじゃなく

 記録情報までをも破壊したからね」

 

「終焉に関する超貴重なデータってワケ!

 2人とも見る覚悟は出来てる~?」

 

尋ねられると2人は頷いた

そして彼女がスイッチを入れると

静かな小部屋に映像の音だけが響いた

 

第4宇宙歴4059年

橙夕の某時刻

 

惑星アンバース宇宙港

 

私はアンバース宇宙港の到着ロビーに降りた

 

 

生まれ育ったこの星も今はまだ平穏そのもので

一日の大半を覆う黄金色の空を見ると

心身の疲れが少し和らいだ

帰還前に立ち会った

『終焉戦争』についての星際会議では各星

概ね同じ意見でまとまった

 

黒い長髪の少女

「敵はこの戦争でスターメモリーの力を

 行使するでしょうね…」

 

「対抗する手段はただ一つ…」

 

各星もスターメモリーで対抗する

つまりはそういう結論だった

 

それは人類の存亡に関わるほどの

戦いになることを意味する

ただ幸いにも銀河は広い

 

他星とかなり距離があるアンバースに戦火が

降りかかるのは早くとも10~20年後…

 

黒い長髪の少女

「対策する時間も知識・技術も十分にある」

「私もこの星のために尽力を…!」

 

大好きなこの星の平穏は私が守る

 

…と、意気込んでいると藪から棒に

私の前にたくさんの人が飛び出してきた

子供たち

「おかえりなさい

 ソラ・アマハさん!」

 

「光の星ってところで

 いっぱい勉強して帰ってきたんだよね!」

 

「すごいすごい!」

 

飛び出してきたのは子供たちとその親で

アンバースの国旗を掲げる人もいる

 

私はすっかりと彼らに囲まれてしまった!

 

ソラ

「これは…えとぉ…

 なにかしら?」

 

子供の親

「そりゃあ大統領の娘さんでよ

 17歳で賢人の称号を受けたとなれば

 星を挙げてのお祝いよォ~」

 

「アンバースの民として誇らしいわよ」

「テレビジョンでも大賑わいよ、今ァ!」

 

ソラ

「そ、そんなことに…」

どうやらお父様は娘の称号をも

政治的アピールに使っているらしい

 

それは国民一丸となる為に

なりふり構う余裕がないということなのかも知れない

 

少女

「ソラさん、これ! お花をどうぞ~」

 

――でも私だって皆の期待に応えたい

 

私は左手で”本”、右手で少女の花に触れ

情報を『汲み取った』

 

ソラ

「真核Ⅱ型光合成植物

 丙種双子葉類のエーギル類」

 

少女「えっ?」

 

ソラ

「——エーギル目ヒガンツツジ科

 ヒガンツツジ属。多湿を好む低木植物」

 

少女「えっえっえっ!?」

 

ソラ

「5~13弁の花びらをもっていることから

 多様性の象徴ともなったり、逆に

 貧富の差・ルッキズムの暗喩とする

 星系・時代もあるとされているわ」

ソラ

「私は『解析』と『情報管理』が専門なの」

「他に解析したいものがあるなら…」

 

少女

「あ…えっと……これ!

 プレゼントです!」

 

ソラ「……え、プレゼント?」

 

私が驚いて目を見開いていると

その場にいた全員がクスクスと笑った

 

ソラ

「その…ありがとう…!」

 

恥ずかしかったけど

私は胸の中がジィンと熱くなるのを感覚した

 

…だけども人とのコミュニケーションは

今後の課題かもしれない

 

私は他の皆にもお礼を言って

温かい声援の中、時計楼閣へと向かった

 

時計楼閣は『時のスターメモリー』が収められている他、

大聖堂や行政機関などがあるこの星の中核を為す建物だ

 

その様相は時のスターメモリーの威光なのか、

6年ぶりでも時間を忘れさせるような恒久的な神秘さがあった

 

 

光の星より帰還した私は

より強力な研究機関設立を提案するため

星内外の情報管理を統括する、

星録局の局長に相談をしに来ていた

星録局局長

「銀河中の知恵を統括する

 『アーキビスト』の養成…か」

 

「たしかにこの計画が実現すれば

 スターメモリー同志がぶつかりあうこの戦争にも

 対抗しうる力となるだろう」

 

局長は私の提案に好意的だった

 

 

ソラ

「私は光の星にて、この『身体で情報を汲み取る』という

 自身の特異体質を研究し、原理の解明に至りました」

 

私は青色の本を取り出した

 

「その原理を応用して作成したのがこの本です」

 

「本に触れることで、

 神経とデータ端末とをダイレクトに接続する」

 

「この本であれば誰しもが可能なスキルとなるのです」

ソラ

「そして情報の共有は最大限に効率化され

 人智は加速度的に洗練されていきます」

 

局長は本に触れ、なるほど…と納得する

 

星録局局長

「さっそく局内での普及と星外の知識共有の

 手だてを取り計らおう」

 

ソラ

「本当ですか!?」

「ご理解頂けて嬉しい限りです」

 

局長の返答に私はホッと胸を撫で下ろした

…局長の言う通り、この終焉戦争では

”大スターメモリーの衝突”が予想される

 

その結果は未知数…

想像だに出来ない現象が

きっといくつも起こる

 

そんな時こそアーキビストの存在が

混沌を切り開く鍵となる

 

私にとってそれは希望だったのだ

その時、電話してくれている局長が

私になにかのジェスチャーを向けてきた

 

人差し指と親指で輪っかを作って

ウンウンと頷いている…!

 

ど、どういう意味なのだろうか…!?

 

私は意味が分からず、彼に尋ねると

局長は気が抜けたようにハッハッハと大笑いした

星録局局長

「戦争までの猶予はまだ十分にある

 後は任せてアマハ君はもう休みなさい」

 

「久しく休みをとっていないんだろう?」

 

局長は、大学卒業後も

休みなく動いてた私の事を気遣ってくれたらしい

 

頼もしく笑いながら「俺に任せておけ」と言う

 

ソラ

「あ、ありがとうございます…!

 心遣い痛み入ります」

確かに…ここは私の故郷

みんな同じアンバースの民、胸がジィンと温かい

 

私は嬉しくてつい口元を緩めた

 

―――たしかに

今日はきちんと休んで、明日からまた頑張ろう

 

私は局長に会釈をし、踵を返した

 

———だが、その時

ゴオオオオオオオオオ!!!

 

絶望を彩る虹色の火花と轟音が全てを吹き飛ばした

 

第2話  時の星アンバース

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