第1話 花と冒険者

パートB

下へスクロール

 

砂蟲が大着地をし、砂煙が空まで舞い上がった

その衝撃はすさまじく、地響きと共にあたりを揺らしている

 

砂蟲はどうなったのだろうか?

砂塵の中に動きはなく、なにか硬い岩盤に反響しているような

ゴオォンという鈍い音が只々あたりを包んでいた

 

「ケホッ!ケホッ!」

 

ナスカ

「生きてる?」

逃げてた獣人娘

「ケホケホッ!…マ~ジ…混沌ンッ!

 ……ホント生きてる私…?」

 

「って砂蟲は!?」

 

後ろを振り向くと彼女は「キャ!」腰を抜かした



さっきまで我々を追っかけていた全長70mほどの砂蟲は

すぐ側でピクリとも動かなくなっていた

口はダランと開き、キツイ腐敗臭を振り撒いている

逃げてた獣人娘

「ぜ、絶命してる…!てか、これ…」

「ヤバめな外傷?」

 

「棘状の地形が体に突き刺さってンだけど…!」

 

鋭い観察眼!

あたしは思わず「正解!」と手を打った

 

ナスカ

「『歪み』の影響かここら一帯、

 高密度ガラスの異常地形が見られてね」

 

「トゲっぽい所を探知して誘導したってワケ♪」

 

あたしは体の螺旋の傷をわざとらしく触って見せた

 

「あはっ♪あたしは螺旋の冒険者、ナスカ・テンタクルス」

「惚れ込んじゃっても、いいんだよ?♪」

逃げてた獣人娘

「歪み…?探知…誘導?」

 

「…それにその傷……」

「………」

 

「あぁっ、踊る人面サボテンの冒険者!!」

 

ナスカ

「お”ぉ!!皆に知られるってぇ快感だわねぇ~…!」

 

あたしは腰を抜かした彼女を支えるよう

情熱的に身を抱き寄せた

 

「それでキミの名前は?」

 

逃げてた獣人娘

「……マンジュサ」

「マンジュサ・ヒバヌヴァルカ」

 

「ナスカ、助けてくれて、ありがとね」

 

そういってマントを脱ぐと、華やかで可愛らしい顔が露わになった

 

こんな慌ただしい状況でも弱々しさのない、その強い眼差しは

純朴さと高貴さをビンビンに醸している

 

ナスカ

「か、かわいい、ご尊顔ン……♡」

 

「……………」

ナスカ

「今マンジュサ・ヒバヌヴァルカって言った!?」

 

この星の入港前、下調べでその名がでかでかと紹介されていた

 

ナスカ

「この星の『王女様』ァ……!?」

 

あたしは咄嗟に身を引いた

 

マンジュサ

「あぁ~もう!堅ッ苦しい言い方ッ!」

「そういうのまじダルいって~!」

 

ナスカ

「ダルい……って、えぇ~…?」

マンジュサ

「あんたはウチにとって命の恩人、でしょ?

 ぶれーこう、ぶれーこう♪ ふけーざい、ふけーざい♪」

 

ナスカ

「不敬罪はアウト…なんよね……ッ!」

 

マンジュサ

「ワハハハッ!どゆこと?」

 

「とにかくナスカ、あんたマジすっごい冒険者じゃん?」

「ナゾい力も使ってさぁ、アレってそういう遺物の力なん?」

 

王女様は大層感激しているらしい

討たれた砂蟲を指さしてワクワクと跳ねている

ナスカ

「えへへ♪」

「そうあれはこの『螺旋の傷』のお陰」

 

「この傷が足取りを軽やかにしたり、レーダーの役目を果たしたり

 尖った地形を探し当てて、そこに砂蟲を誘導したり…してくれる」

 

「『理(ことわり)の歪み』を操る、

 摩訶不思議な力なのじゃ~」

 

マンジュサ

「えぇ~、すっげぇ……すごそ~じゃん!!」

 

「この実力なら、ひょとすると~…」

 

ナスカ

「?」

マンジュサ様はその大きな耳に手をかけて考え事?をしている

 

と、いうか耳を澄ましている様に見えた

 

マンジュサ

「うん、まぁ問題ないっしょ!」

 

「冒険者ナスカ、あんたに相応しい

 冒険依頼があんだけど興味ない?」

 

ナスカ

「冒険依頼?もしかして王女直々の?」

「あはっ♪ 面白くなってきたねぇ~」

 

「ぜひ話を聞かせてよ」

マンジュサ

「ならまたビークルに乗って、詳しくは王都で話すからサ」

 

「くぅ~!こんな実力者がそっこーで捕まるなんて

 キケンを犯した甲斐があったんじゃん♪」



「てぇ、変なトコロ触んじゃねーし」

 

ナスカ

「あ、イケると思ってつい…」

「それじゃあ出発~♪」

 

マンジュサ様がアクセルを踏むと

ビークルはガタガタと少し故障気味に動き出した

 

どうやら王女が護衛も付けず単身で出張っていたのも

その冒険依頼のためらしい

 

尋常じゃない珍妙な状況だ…

 

ナスカ

「珍妙…」

 

その時、あたしは違和感に気が付き

砂蟲の方を振り返った

『砂中生活の生き物』が、

砂中のトゲに気付かずに刺されにいくなんて…

そんな初歩的ミスを犯すのか?

 

あたしは袂のポケットから

双眼鏡を取り出し、観察する

 

すると砂蟲の大きな口からなにやら植物のような…

花のようなものが蠢いていた

 

動物を操る植物的な?

この星にはそういう生態系もあるんだろうか…

詳しくはわからない

 

しかしそのまま眺めていると

その中の一輪の花がこっちをジッと睨み返して

まるで「怒っている」かのように花弁をクシャっと縮こませた



ナスカ

「やっぱり…妙だね、面白い」

 

この星の『花』には嫌われている……

あたしはそんな風に感じた

 

ヒガンの王都は人口10万人ほどの、星首都としてはかなり小規模な都だった

 

星全域を包む異常な乾燥気候のせいだろうか

1万年前に起きた『終焉』からの復興は現代でも遅れているらしい



ただそんな星だからこそ住民たちは逞しい

 

道行くケモミミの民たちは快活に笑って談笑していたり

陽気な音楽に激しく踊ったしているのが見受けられた

 

マンジュサ

「皆楽しそうにしてるけどさ」

「この1万年間惑星ヒガンは、生活していくのにマジ必死で~」

 

「惑星発展ナンダソレって感じなんだよね」

 

ナスカ

「確かに…つい最近までヒガンなんて聞いた事なかったよ」

 

マンジュサ

「なんか~緑化計画とかに全力?だったらしいんだけどね」

 

「トホホ~、ぜぇ~んぶ失敗、信じられる?」

「王都が始まってからだと6000年間ぐらい?全部だよ」

ナスカ

「不思議…というか、『終焉』の歪みのせいだろうね」

「歪みが植物の生育を阻んでたのかな」

 

マンジュサ

「おぉ、ヤッバ!ウチと同じ考えじゃ~ん♪」

「そう、終焉のせい!」

 

「ヒガンに必要だったンは終焉の歪みに挑み、

 謎を解明する…そういう『冒険者』だったってワケ♪」

 

ナスカ

「わ~ぉ、時代は大冒険時代…!」

「そのための冒険依頼ってワケね」

 

マンジュサ

「そゆことそゆこと♡」

マンジュサ

「さぁ、惑星ヒガンにワックワクの冒険の風を吹かせんよ~」

「冒険酒場にレッツ~……ゴーッ♪」

 

「どりゃああ!」

 

酒場についたマンジュサ様は勢いよく扉を蹴破った



今そこまでやる必要あった?

王都の冒険者酒場

 

公共物である扉を突如ぶち壊された店内には、当然の如くどよめきが走った

 

冒険者たち

「なんだ敵襲か!?」

 

店にいた冒険者たちは扉の方を一斉に振り向き、身構える

が、しかし来訪者が王女だとわかると、ヤレヤレ顔を見せる

 

「またか…!」

 

ナスカ

「またなんだ…!」

どうやらマンジュサ様はこの星で

「お転婆」の名を欲しいがままにしているらしい…

ぶっ飛んだ扉を気にも留めず、皆の前に躍り出た

 

店は酒の臭いと紫煙、埃っぽさで満ち、100席ほどが全て満席

お酒片手に語っていたであろう冒険者もいれば

学者先生らしいお爺さんお婆さんもいた

 

全員の注目を集める中、

勢いままにマンジュサ様は熱い口火を切った

 

マンジュサ

「冒険者の諸君!」

「そして研究者の諸君に……あと普通の飲食客の諸君!」

 

「超サプラ~イズっ♪」

 

「史上サイコーのお触れって感じ♪」

「そう…惑星ヒガンの命運を分ける冒険依頼~ッッ!!」

 

冒険者

「おぉ!!!」

 

「大冒険…!?」

「またいつもの商隊の護衛とか…

 砂蟲の討伐とか……の、依頼の話じゃねぇのか…?」

 

マンジュサ様の口上に、店内はどよめいた

マンジュサ

「もちろん~ッ…!」

「迷子猫の見つける依頼でもないよ~☆」

 

ナスカ

「ゴフッ!? 迷子猫…!?」

 

あたしはしれっと注文していた砂漠コーラを噴き出した

 

冒険者というよりかは使いっ走りというか…何でも屋というか…

なかなかに、…いや結構に愉快な星へ来てしまっていたらしい…

マンジュサ

「冒険の舞台は…」

 

「皆もここんトコずっと噂にしてたあそこ…

 3日前に突如として砂漠に現れた地下迷宮~!」

 

マンジュサ様はニッと笑い手元を操作すると、ホログラムが出てくる

 

ホログラムは迷宮の構造や生態系が描かれた立体地図の他に

理の歪みの分布図なども表示されていた



ガリガリの若い冒険者

「おぉ!あの謎のダンジョン…!!」

「ついに事前調査が終わったんですな…!」

マンジュサ

「そう、今朝ウチがやっておいた☆」

 

ナスカ

「ゴホフッ!さっきの…あれか…ッ!!」

「王女自ら調査するほど、人手が足りてないのォ…!?」

 

マンジュサ

「いんや~、ちょ~大変だったンよ~」

「けど、お陰でちょ~良い事も判明したの」

 

マンジュサ様はマップの最下層を指さして強調した

 

マンジュサ

「ここの、最奥…!ここに強力な歪みの源がある…ッ!」

 

「惑星ヒガンの古い伝承と照らし合わせると

 ここにとんでもないお宝が眠っているンだってさ!」

 

「それは即ち…植物の繁栄を司る神秘の枝…『聖樹の枝』…だって♪」

 

突然の情報に店内は静まり返った

マンジュサ

「この枝の力はま~じ絶大、

 砂漠に乾いたこの星をも一振りで緑豊かにできるンだってサ♪」

 

「この代物を持ち帰ってくるのが今回のミッションってワケ☆」

「惑星ヒガンの命運を大きく左右するこの任務

 成し遂げたれたら、まさに!英雄じゃん?」

 

冒険者たち

「お、おおおおおぉっ!」

 

「英雄かぁ…ッ!」

「あの迷宮の奥に…聖樹枝ッ!」

「あの伝説の聖樹枝ッッッ!?」

 

王女の力強い一声に店内は沸き立った

伝説…?

 

古い伝承ともいっていたし…終焉以前の旧文明の話かな…?

あたしはしれっと注文していた砂漠牛ステーキを頬張る

 

冒険者たち

「伝説の聖樹枝ッ♪  伝説の聖樹枝ッ♪ 」

 

「いや、ちょっと待って……」

 

「そんな伝説、聞いたことねぇよ」

「あ、いや、すまん…ノリだけで話を盛ってしまった…」

 

ナスカ

「ゴフッ!ゴホッグホッ…!」

「いや、伝説じゃないんか~い…ッ!」

冒険者たち

「そんな伝説ねぇよ」

「じゃあ、その聖樹枝ってなんなんだぁ?」

 

ナスカ

「『スターメモリーの遺物』だよッ!」

 

それは理の歪みの分布図をどう見たって明らかだった

思わず、あたしは大声でツッコんでいた

中年と思わしき冒険者

「え、誰?」

 

「てか、え?『スターメモリー』ってあの…

 すごい力をもつ…あの?」

 

ナスカ

「そうだよ…モグモグ」

 

「歪みのデータから読み取る限り~…

 惑星系規模の中規模な力持つ遺物だろうけどね、モグモグ…」

 

あたしはステーキを食べ終え、口元を拭う

 

『スターメモリー』

 

宇宙と共に生まれた理の歪み

またその力を宿した7つの神器のことを指す



1万年前の『終焉』によって歪みの力は銀河中に波及

結果宇宙各地に『遺物』と呼ばれる不思議なアイテムが誕生した

 

遺物にも歪みの力が宿っており、例を挙げると

『時を戻す銀時計』や『巨龍になる神薬』など

それ1つで星の生活水準や、惑星間での権威を一変させる代物もある

マンジュサ

「……さすが!

 大型の砂蟲を打ち倒す程の冒険者じゃん☆」

 

「あんたも参加してくれたらちょ~嬉しいんだけど、どうかな?」

「例え異星の冒険者だとしても、報酬は弾むよ~♪」



マンジュサ様があたしに向かって強調して言うと

冒険者たちの視線は一斉にこっちに集まった



ベテラン風味の冒険者

「それでホント誰なんです、こいつぁ?」

マンジュサ

「この子はナスカ・テンタクルス」

「異星からの凄腕の冒険者だよッ☆」

 

「というか皆知ってるでしょ…あれだよ、あの踊りの人」

「踊る人面サボテンを発見した冒険者!」

 

一同

「あぁ~、あの!」

「ちょいブサイクなやつ!」

 

ナスカ

「あのサボテン、けっこうカワイイと思うんスけど…」

マンジュサ

「あぁ~、ウンそれは諸説かもっ☆」

 

「…ともかくナスカはま~じ優秀な冒険者だからさ」

「必ずこの惑星ヒガンのためになってくれると思う」

 

「お互い協力し合ってね」

 

ナスカ

「あはっ♪」

「そういうことで、皆よろしくねぇ~」

 

あたしは笑顔で手を振るが、皆は困惑していた

 

ちょい髭の老冒険者

「優秀な冒険者つったって、こりゃまた…なんつーかさぁ」

 

「自分の星に帰った方が良いんじゃねえの?」

 

ナスカ

「ぬぬっ?」

 

ちょい髭の老冒険者

「だって…装備も軽装だし、貫禄もないし?

 見た目は年端も行かない―——ただのガキだし?」

 

マンジュサ

「ちょっとちょっと!」

「この子の実力はウチが保障し―——」

 

アラサーの冒険者

「マンジュサ様ぁ、こっちだってこんなこと言いたかぁないですよ」

「けどよぉ…この子…その……」

アラサーの冒険者

「『バグ』だし…」

 

ナスカ

「………」



ちょい髭の冒険者

「その『螺旋の傷』って『バグ』の証だろ?」

 

皆の注目があたしの首の、手首の、太ももの傷に注がれた

 

ちょい髭の冒険者

「…別にバグだって事を悪く言うつもりじゃねぇ」

ハゲの冒険者

「そうそう」

「こっちの…なんていうか……そう、後味の問題でぇ」

 

「バグなんて『短命の種族』なんだからよ、

 冒険なんてせず銀河連邦の支援だがなんだかを受けてよぉ

 のびのび暮らした方がいいんじゃねぇかって話」

 

どうやら冒険者たちは皆同じ意見らしい

あたしは同情の目に取り囲まれてるようだった

 

『バグ』

 

それは終焉以後、人から稀に産まれる種族

 

怪異などと同じく終焉の悪影響に代表される1つで、

その身に刻まれた『螺旋の傷』に理の歪みを宿している、といわれている

 

その自身の歪みの影響なのか例外なく『短命』の定めを背負う

人類みんなで終焉の傷を乗り越えよう!

…という統率の意味合いもあったのだろう

 

銀河連邦はバグを人類の亜種として認め、その短い命に温情をかけた

連邦下でなら、何不自由なく暮らしていけることは有名である



ヨボヨボの老研究者

「キミぃの寿命はいくつ…なンだい…?」

「バグなら検診で出とるンじゃろう」

ナスカ

「寿命は22歳半…あと6年と4か月半だよ」

 

ヨボヨボの老研究者

「あぁ、おいたわしや…なんという…」

「悪いことは決して言わん…だから星に帰りなさい」

 

ちょい髭の老冒険者

「冒険者は知識と経験が命…

 短命のバグなんて…夢半ばでくたばるのがオチだろうぜ」

 

「永いこと、死にぞこないの冒険者やってるオレたちからのアドバイスだ」

 

ナスカ

「………」

ちょい髭の老冒険者

「ほらお互い構ってる時間がもったいねぇな

 さ、みんな行こうぜ」

 

さっきまでの熱気は気まずい空気に変わっていた

 

皆は気持ちを冒険の方に切り替えるために、

そそくさと受付で依頼の登録に向かおうとする

 

 

―——しかし、その時

 

「それでも夢を抱いちまったんだよ」

 

かわいらしくも、魂に響くような凛とした声がして、

皆が振り返った

 

それは…あたしの声だ!

 

 

ナスカ

「あの日あの瞬間、胸の中に輝くトキメキが…」

「強く、運命を手繰り寄せたんだ!」

 

ナスカ

「あたしの名はナスカ・テンタクルス!」

 

「7つあるスターメモリーを全て手に入れて

 誰よりも素敵な冒険をする冒険者!」



「この短い命、全てを投げ打つに能う夢なんだ!」

 

「だから―――」

ナスカ

「あたしの活躍に注目しておくよう、オススメするよっ♪」

 

マンジュサ

「夢…!」

 

場はしん…と静まり、そこの誰しもが圧倒されていた

だけど、これ以上は言葉などいらないはずだ

 

あとは『夢』の力強さを結果で示すだけ

 

ナスカ

「じゃ現地でね♪」

依頼登録はご飯の注文前、

一番乗りで済ませていたから

あたしは悠々と店を後にした

 

異邦者が立ち去った店内はザワザワと騒然となったが

あたしの等身大の夢を笑う者はそこにはいなかった

 

ナスカ

「あはっ♪ 存外、良い人たちじゃんね」

 

あたしは商店街で軽く支度をし、

砂上モービルのレンタル屋に向かった

 

レンタル屋についてあたしはすぐ違和感に気付いた

…扉が壊されている

 

ナスカ

「まただ…っ!」

「誰かあの人に扉の開け方を教えた方が良いよ…!」

 

「マンジュサ様ぁ?」

 

店の隅っこ、ちょっとした待合室に王女様はいた

荷物でパンパンのリュックの重さに若干負けて

エビ反りになっているところ目が合った

マンジュサ

「ナスカ…あのさ、やっぱ私も連れてってくれない?迷宮に」

 

ナスカ

「ぬぇ!?」

「な、なんば言いよんしゃっと…?」

 

マンジュサ

「イ、イーヨンシャット…?」

ナスカ

「あ、いや…思わず方言です……」

「じゃなくて、連れてほしいって言った、今?キケンな迷宮に!?」

 

マンジュサ

「……」

 

マンジュサ様が首元のチョーカーをとり、

サマーブーツのファスナーを開くとそこには

『螺旋の傷』があった

ナスカ

「バグ…なんだ…マンジュサ様も…」

 

マンジュサ

「うん、この星では王の血筋だけ…時折バグが産まれるんだ」

「ウチは確か300年ぶりのバグ、…だったかな?」

 

「『聖樹の枝』が持つ理の歪み…とけっこう因縁があるらしくて…」

「この螺旋の傷が強く疼くんヨ」

 

マンジュサ様は装いを戻し

あたしの名前で借りていたビークルに荷物を叩き乗せた

 

ナスカ

「一挙手が雑ぅ…ッゥ!」

 

マンジュサ

「…この傷がきっと聖樹の枝に導いてくれるから」

マンジュサ

「それが皆の為になるんなら、

 この命投げ打つに能う、真の『夢』…じゃん☆」

 

「皆、気を遣ってウチが前線に来ないように言ってたけど…

 …ナスカの言葉で気分が変わった」

 

「だから連れてって」

「夢半ば…なんて笑止千万ッ☆」

 

マンジュサ様は悪戯っぽく笑って見せた

 

ナスカ

「キュンと来るねぇ…!」

「そういう思いがあるなら断らないよ」

マンジュサ

「ホント!?」

 

ナスカ

「既に荷物つっこんどいて、ホント!?じゃないよ…!」

「まぁ、迷宮の歪み強度的にも問題ないはず…」

 

「――ちょっとしたデート気分だね♪」

 

あたしはビークルに飛び乗り、マンジュサ様をエスコートした

 

旧型の重力エンジンをかけるととビークルは

ガタコトと愉快な音を奏で、そのまま騒がしく発進した

マンジュサ

「ワハハ、次この王都に着く時には聖樹の枝も一緒だよ」

「目指すは地下迷宮!」

 

ナスカ

「テンション上がるね、レッツゴー!」

 

そしてビークルは爆速で走り出す

カンカン照りの砂漠の中、砂に乾いた風に乗って

楽し気な2人の少女の歌が響いていた

 

第1話  花と冒険者

Bパート