第3話 アーキビストの少女

パートB

 

その後、先輩である2人は図書館で空いてるスペースを確保し

大量のデータ端末たちを私たちの前に広げた

 

どうやら研修の準備をしてくれているらしい

 

レオンド

「そんでなんだよ、ナスカたちは見学でもすんのか?」

「折り紙以外、別になんもねぇぞここ」

ナスカ

「折り紙、いいじゃ~ん」

「あたしとメーチュはさ『データ解析』について

 ちょ~っくら興味があるんだよねぇ~♪」

 

レオンド

「興味ぃ?」

 

「……はぁ、まぁどうせ『終焉のデータ』の

 解析結果がいち早く欲しいんだろ?」

 

ナスカ

「ぬ、ぬぐぅ…速攻でバレた…」

レオンド

「終焉で壊されなかった貴重な情報…

『スターメモリーの場所』について載ってるんだもんな」

 

「冒険者なら当然…バグのあんたらなら尚の事早く欲しいだろうな」

 

メーチュ

「えっと…ここの解析班でも今、難航しているんですか?」

レオンド

「あぁ~、ここの…ていうか星律教会”本部”…

 光の星からも精鋭が送られてきてはいるがぁ…」

 

「う~ん、どうだろうかねピリーカ?」

 

ピリーカ

「え~ん、なんというかですねぇ~

 非常に言いずらいのですが~…」

 

ピリーカは物凄く申し訳なさそうな顔で口ごもる

ピリーカ

「あとぉ…2年ぐらいは解析にかかるようなんですよね~…」

 

ナスカ

「………………」

「そっか、2年…か」

 

メーチュ

「…どうしようナスカちゃん…」

 

ナスカ

「…大丈夫やりようはある、さすれば奥の手を…」

 

あたしは小声で言った

ソラ

「ナスカ…大丈夫?」

 

ナスカ

「もちろんもちろん!」

 

「け~どっ、『待つ』だけは性に会わないからさ

 今は見識を広める時間にあてようかな!」

 

メーチュ

「……ということなので、ピリーカさん!」

「データ解析のお仕事の研修、

 私たちも受けてもいいですか?」

ピリーカ

「お、推しに手ほどきできるなんて!」

「これでお給料発生してイイんですかぁ~?♡」

 

レオンド

「オイオイ~いいのか部外者に~」

 

そういいながらも先輩2人はあたしたち分のデータ端末をくれた

それを見たソラはまた何か考察に耽っているらしい

 

ソラ

「私はいいわよ、気にしないで

 後ろで2人のやり方を見てるわ」

 

レオンド

「はぁ?ヘンテコなやつ」

ピリーカ

「それじゃあこの元データを解析していきます~

 これには少しコツがいるんですよ~」

 

「ここには膨大な数値データ・文献が無造作にまとめられててぇ

 気軽に扱うには煩雑過ぎるんですよねェ~」

 

「なので必要とする要素だけを抽出してまとめるのです~」

ピリーカが本型の情報端末に触れると

『ドーナッツ』に関するあらゆる情報が乱雑に表示された

 

ナスカ

「歴史・レシピに構成物質…はたまた宇宙の形に関する論文まで!」

「すごい……ゴチャゴチャだねぇ」

 

ピリーカ

「ではこの中から「長首族が好むレシピ」…みたいに

 1つのカテゴリーに絞ってデータを抽出してまとめるとぉ~」

 

そういって彼女は左手を紙面上でサッと走らせたかと思うと

右手からかわいらしい折り紙のドーナッツが生まれた

ピリーカ

「これが上手く抽出され整頓された有意義なデータです~」

「味のデータもまとめて居るので折り紙のモードをいじれば

 テイスティングもできるんです~♡」

 

ナスカ

「なるほどぉ、整って使いやすいデータだと

 折り紙という形になるんだ、面白いねぇ」

「これ、お腹は膨れないけどっ♪」

 

メーチュ

「さっそく食べてる…!」

 

ピリーカが手で指示すると折り紙は

部屋の隅にある折り紙の箱庭へと飛んで行った

ナスカ

「なるほどアーキビストがよくやっている

 謎技術について判明し得心がいったよ!」

 

「遊んでなかったんだ…!」

 

レオンド

「放り出すぞ、お前…!」

 

ソラ

「ともかく、大胆だけど視覚的にわかりやすくて良いわね、折り紙って」

「使えるデータに形を与える発想は気に入ったわ」

ピリーカ

「おぉ初代アーキビスト様のお墨付き~♪」

「じゃあさっそくお2人も解析やっちゃいましょ~♡」

 

ナスカ

「わぁ、楽しそうだねぇ!」

 

さっそく情報端末に触れると

『ドーナッツ』の情報が頭の中にドッと押し寄せてきた

ナスカ

「おほふっ……これは……ッ!」

 

映像や音、文字数字、味と匂いの交差は激しく

すぐに脳のキャパシティ限界まで差し迫ってきた

 

頭は電流が走ったように痺れ

目は裏返るほどの眩しさにひん剥かれた

しかし五感は肉体から弾かれ、意識が脳に溶け込んだあたりで

あたしは光の中で”女の子”に関する情報を掴み取った!

 

ナスカ

「ここォ!!」

 

そして手の中にイメージを込めると

そこに折り紙が生まれた感触があった

 

レオンド

「お、おい!あんまり無理すんなよッ」

「もうヘロヘロじゃねぇか」

 

ナスカ

「はぁ…はぁ……い、いや…大丈夫~」

ナスカ

「ほらぁ折り紙…!へにゃへにゃハート…!」

 

手を広げるとそこにはクシャクシャしたハートの折り紙があった

 

ピリーカ

「えぇ~!すごいすごい!」

「初見で折り紙の生成に成功するなんて~!」

 

「私なんて2年半もかかったのに~」

レオンド

「なになに?『若い女の子を虜にするドーナッツの統計』」

「味覚生理学に基づいた5000年分の推移と傾向……」

 

「うまくまとまってるけど…ゆ、有意義なのかこのデータ!?」

 

ナスカ

「この時代、差し入れのドーナッツ選びのセンスで他の男と差をつけるんだよっ」

「はぁはぁ……まぁあたしは女型のバグなんですけどネ…」

「いや待って…吐きそう…」

 

レオンド

「なんちゅう執念…!

 どんだけ女の子好きなんだよ」

メーチュ

「あ、私の方もけっこうがんばれた……かも!」

 

一方メーチュはあたしの両手ほどの折り紙の兎を作っていた

『ドーナッツが人に与える幸福の統計』データらしい

 

ピリーカ

「キャ——ッ!2人ともすごいです~!」

「私の2年半はなんだったのやら☆って感じです~~♡」

レオンド

「いや、冗談抜きにこれって快挙じゃねえか?

 初めてでこれって歴代でもトップオブトップじゃん」

 

メーチュ

「え、えへへ……うまくいったねナスカちゃん」

「ソラさんはどうでしたか私たち…?」

 

ソラは私たちの折り紙を見て、考える仕草のまま淡々と答える

ソラ

「……2人とも、」

「『バース』を使ったでしょ」

 

ナスカ

「うえぇ!?」

 

バースとはあたしが時の星でも使った超自然的な力

バグが持つ理の歪み由来の神通力だ

 

ソラ

「『心』の力…青色の歪み

 そして『物質』の力、橙色の2つの歪みを感じたわ」

 

ナスカ&メーチュ

「……………」

ソラ

「2人ともその力で難航中の終焉データ解析を

 『強行突破』しようとしているのね」

 

「時の星で見せたような、己の形が崩壊するほどの力を使おうとしてる」

 

ナスカ

「……………」

「……ず、図星です……」

 

ソラはそれ以上言及せずに少し思案した

 

呆れてるとか怒ってるとかでもなく

悲しんでるでもなく…只々、思案の顔

ソラ

「ペリーカ、レオンド、私たち行くべき所ができたわ」

「お先に失礼するわよ」

 

レオンド

「え、えぇ!?」

 

ピリーカ

「職場…イ、イヤでしたか~!?」

「しょんな~!ここはアットホームな職場ですよ——ッ!?」

 

そんな社畜の言葉には目もくれずソラはそそくさと部屋を出た

有無を言わせない彼女の背中にあたしたちはオドオドと続く他なかった

 

ナスカ

「ここって…終焉データの解析の部屋?」

 

ソラが向かったのは終焉のデータのある部屋らしい

大型の解析装置の真ん中に大きな歪みの力を持ったデータ端末が添えてある

 

メーチュ

「それに誰も…いない…?」

「解析の人たちはどこに行ったんだろ…?」

 

ソラ

「今は全員休憩中よ、1人を除いて」

ソラ

「――ねぇ、ランダカン支部長!」

 

ランダカン支部長

「アマハ・ソラ!それにバグ冒険者のォ!?」

「…なぁんで、この場所にいンだよぉ?扉のロックは!?」

 

ソラ

「不正に解いたわ、そんなもの

 それに皆の休憩時間も調べたわ、不正に」

 

メーチュ

「ン犯罪…ッ!」

ランダカン支部長

「き、気ぃでも狂ったクレイジーかぁ貴様~!?」

「何が狙いなンダぁ!ひ、人を呼ぶぞ!?」

 

ソラ

「ふぅん…それは困るわね

 じゃあ単刀直入に言いましょう」



「その終焉のデータを私に解析させなさい」

 

ナスカ&メーチュ

「え、えぇ~!?」

 

第3話 アーキビストの少女